2008年07月21日

アンドリュー・ヒルの最高傑作といっても過言ではない


迷宮に迷い込んでしまったような不安感。

アルバム全体を彩るトーンは、
どこまでも出口の無い灰色だ。

靄(もや)のかかったような、
行き場所の見えないピアノが中空を徘徊する。

ピアノトリオにさらにベースが1本加わった、
ベース2台の変則編成。

からみ合い、蠢く低音が混沌感を助長し、
展開の読めない重たいピアノが、
あるときは流麗に流れたかと思うと、
突如和音を訥々と連打する。

鈍重なヒルのピアノと好対照な、
ロイ・ヘインズのシャープなドラミングが演奏の推進力。

彼の確信に満ちた刻みとオカズを入れるタイミングが、
この演奏の道しるべ。

聴けば聴くほど、
マインドの迷宮奥深くで彷徨いがちな我々に、
薄明るく道筋を照らし出してくれる。

しかし、行き着く先は分からない。

ひたすら、不安を抱え込んだまま、
ヒルのピアノに耳を澄まし、
演奏の最終地点まで我々は耳を離すことが出来ない。

難解だが、確固とした独特な「世界」が形成されている
アンドリュー・ヒルの傑作。

幾重にも張り巡らされた謎解きを楽しむ知的好奇心を刺激してやまない、
いや、それどころか、
まるで自分自身も灰色に覆われた音世界の住人の一員にいつのまにかされてしまっている演奏。

ノイローゼな人、鬱気味な人は聴かないほうがよいかもしれない。

しかし、未知なる音世界、
そして従来の聴き慣れたピアノジャズからの聴覚の拡張を望んでやまない人にとっては、
これ以上の知的刺激を与えてくれる音源はないだろう。








『SMOKE STACK』 (Blue Note)
 Andrew Hill

 1. Smoke Stack
 2. The Day After
 3. Wailing Wail
 4. Ode to Von
 5. Not So
 6. Verne
 7. 30 Pier Avenue
 8. Smoke Stack
 9. The Day After (Alternate take)
10. Ode to Von (Alternate take)
11. Not So (Alternate take)

  Andrew Hill (p)
  Richard Davis (b)
  Eddie Khan (b)
  Roy Haynes (ds)

  1963/12/13





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posted by 雲 at 10:08| Comment(1) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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